基礎代謝量(BMR)を計算するには複数の計算式があります。代表的な「ハリス・ベネディクト式」と「ミフリン・セントジョール式」はどちらも広く使われていますが、精度・用途に違いがあります。この記事では2つの式の特徴と違いを解説します。
1. ハリス・ベネディクト式(1919年)
ハリス・ベネディクト式は1919年にJ.A.ハリスとF.G.ベネディクトが発表した、歴史ある計算式です。長年にわたって医療・栄養の分野で使われてきました。
| 性別 | 計算式 |
|---|---|
| 男性 | 66.47 + (13.75 × 体重kg) + (5.003 × 身長cm) − (6.755 × 年齢) |
| 女性 | 655.1 + (9.563 × 体重kg) + (1.850 × 身長cm) − (4.676 × 年齢) |
1984年にレイベネストが現代人のデータで修正した「改訂版(レイベネスト式)」も存在し、現在はこちらが使われることが多いです。
2. ミフリン・セントジョール式(1990年)
1990年にミフリンとセントジョールが発表した式で、現代の欧米人のデータをもとに導出されています。現在、多くの計算ツールや医療現場で採用されています。
| 性別 | 計算式 |
|---|---|
| 男性 | (10 × 体重kg) + (6.25 × 身長cm) − (5 × 年齢) + 5 |
| 女性 | (10 × 体重kg) + (6.25 × 身長cm) − (5 × 年齢) − 161 |
3. 2つの式の精度比較
2005年に発表されたWidgetらのメタ分析では、ミフリン・セントジョール式の方がハリス・ベネディクト式より実測値に近い精度(82%が実測値の10%以内)であることが示されました。
| ハリス・ベネディクト式 | ミフリン式 | |
|---|---|---|
| 発表年 | 1919年(1984年改訂) | 1990年 |
| 精度(10%以内) | 約68〜75% | 約82% |
| 特徴 | 歴史が長く研究が多い | 現代人のデータに基づく |
| 向いている人 | 一般的な使用全般 | 現代の一般成人 |
どちらの式でも算出値は「推定値」であり、実際の基礎代謝とは個人差があります(±10〜15%程度)。
4. もう一つの選択肢:除脂肪体重を使うカニンガム式
筋肉量が多いアスリート等では、体重だけを使う式では基礎代謝を過小評価しやすいという課題があります。これを補うのが「カニンガム式」で、体重ではなく除脂肪体重(LBM:脂肪を除いた体重)を使って計算します。
| 計算式 | 詳細 |
|---|---|
| カニンガム式 | BMR = 500 + (22 × 除脂肪体重kg) |
除脂肪体重は「体重 ×(1 − 体脂肪率)」で概算でき、体脂肪率が分かっていればより筋肉量を反映した推定値を出せます。一般的な体型の人にはミフリン式で十分ですが、筋肉量が多い・少ないなど体組成が標準から離れている人はカニンガム式の方が実態に近い場合があります。
5. 日本人への適用について
両式ともに欧米人のデータをもとにしているため、体格の違いがある日本人への適用には誤差が生じる可能性があります。厚生労働省の「食事摂取基準」では年齢・性別・身長・体重の「参照体位」に基づく基礎代謝基準値が示されており、これも参考になります。
年代別の日本人の平均的な基礎代謝については基礎代謝の平均値(年代別)を参照してください。
6. 体組成計が表示する基礎代謝との違い
家庭用の体組成計にも基礎代謝が表示される機能がありますが、その数値はハリス・ベネディクト式やミフリン式のような公式にそのまま体重・身長・年齢を当てはめたものとは限りません。多くの体組成計は、体内に微弱な電流を流して電気抵抗(インピーダンス)を測定するBIA法という技術を使い、その結果から独自のアルゴリズムで体脂肪率や筋肉量を推定し、それらの数値をもとに基礎代謝を算出しています。そのため、同じ体重・身長の人でも、メーカーや機種によって表示される基礎代謝の数値が異なることがあります。
体組成計の数値と、身長・体重・年齢だけを使う計算式の数値がずれていても、どちらかが間違っているというより、算出の前提となる考え方が異なっていると捉えるのが適切です。日々の変化を追いたい場合は、同じ体組成計・同じ計算方法で継続的に測定し、数値の推移を見ることが実用的な使い方になります。
7. どの計算式を選べばよいか
特別な事情がなければ、現代人のデータをもとにした精度の高いミフリン・セントジョール式を基準にするのが無難です。体脂肪率が極端に低い・高いなど、体組成が標準的な範囲から大きく外れている自覚がある場合は、除脂肪体重を使うカニンガム式の方が実態に近い数値になりやすいとされています。いずれの式も「絶対に正確な値」を出すものではなく、あくまで目安として、実際の体重の増減や体調の変化とあわせて確認しながら活用するのが現実的な付き合い方です。
8. 他の計算式との違いも知っておく
基礎代謝の計算式には、この記事で紹介した以外にも「国立健康・栄養研究所の式」など、日本人のデータをもとに作られたものも存在します。海外で作られた式は主に欧米人の体格データをもとにしているため、体格差のある日本人に当てはめると、実際の基礎代謝より高めまたは低めに算出されることがあります。どの式を使う場合でも、算出された数値はあくまで統計的な推定値であり、実際の基礎代謝には個人差があることを念頭に置いておくとよいでしょう。
複数の式で計算してみて、結果に大きな差が出た場合は、それぞれの式がどのようなデータをもとに作られているかを確認し、自分の体格や年齢に近い集団を対象にした式の数値を優先的に参考にするという考え方もあります。数値の正確さにこだわりすぎるよりも、同じ式で継続的に計算し、体重や生活習慣の変化とあわせて傾向をつかむことの方が、日常的には実用的です。
まとめ
ミフリン・セントジョール式は現代の研究では精度が高いとされ、多くのツールで採用されています。ハリス・ベネディクト式は歴史が長く参考文献が豊富です。どちらも推定値であることを踏まえて活用してください。自分の基礎代謝を計算したい場合は基礎代謝計算ツールを使ってみてください。